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三崚堂ブログ

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鍼灸師でも凄い人はスゴい

不妊について昭和初期の頃の文献を調べていると、面白い文章を見つけた。
西野忠次郎博士の『内科領域に於ける発熱と微熱』という論文中の文章である。

『婦人殊に若い婦人に於て月経前数日乃至十数日に至り微熱を発し、月経来潮と共に下熱する場合は中々多い。時には月経の済むまで続く場合があり、或は月経期間丈存する場合もある。又妊娠すると暫くの期間微熱を発する婦人も中々少くない。』

今では生理周期において、排卵から月経までの高体温期とその次に来る排卵までの低体温期があるということは広く知られるところであるが、そういった生理周期と体温変化についてまだよく知られていなかった頃の論文のようである。そしてその微熱の原因を以下のように考察している。

『以上ニ者に於ては何れも潜伏結核に原因を帰して居る向きも多い様であるが、少くも其内の或部分は慢性の膀胱腎ウ炎とか、子宮附属器の炎症などが熱源となって居る場合もあり得ると思ふ。』

つまり高体温期の微熱は、体内に潜伏している結核菌の仕業かあるいは慢性の膀胱腎ウ炎、子宮附属器炎に起因する場合が多いとしているのである。今となってはあり得ない考察ではあるが、それだけ結核患者も多く、その扱いに苦慮していたのであろう。
また、

『其他、月経、妊娠時期には生殖腺の異常と同時に甲状腺又は脳下垂体等の機能変調も想像し得べく、従って是に関連して交感神経緊張が高まり、其結果微熱を発するに到るならんとも考へ得る。何れにしても月経及妊娠時の微熱を全部潜伏結核の為めと断ずる事は早計であると思ふ。』

それ以外にも、生殖腺の異常、甲状腺又は脳下垂体等の機能変調、それらによる交感神経緊張も微熱を発する要因になると言っている。
この部分に関しては、ホルモンバランスの変化がそうさせていると言えなくもなく、いい線を行っている。

この論文は、月経前の微熱が潜伏結核によるものが多いと云われていた当時に於て、そればかりとは限らないのではないかという主張のものである。この論文を引用した著者も自らの臨床経験から、月経前の微熱と潜伏結核との関係に疑問を持っていたところ、上記論文を見い出し意を強くしたと述べている。今になってみれば、著者の臨床経験からの知見が正しかったことになる。医者ではなく市井の一鍼灸師の臨床に因るところなのがスゴいと思うのである。
周りの風説に流されず、自らの臨床経験を重視し信じる著者の姿勢に敬意を表したいと思う。

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2007年3月、満を持して治療院を開業しました。

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